カーエアコンの仕組みを図解で分かりやすく解説
自動車のエアコンは夏の暑い時期だけでなく、雨の日、冬の寒い日など温度変化や湿度の変化によるガラスのくもりを止める除湿機能があります。冬のうちから、「フロントガラスのくもりがとれないな~」などの症状があれば要注意です。夏の暑い時期になってからでは大変ですし、梅雨の時期に曇りがとれないと視界が悪くなり危険です。早めのメンテナンスでカーエアコンを快適に使えるようにしておきたいですね。
豆知識
国内の自動車保有の変化もエアコンの不調などを感じるお客様が増えた要因ではないでしょうか?
乗用車の平均車齢は1990年で約4.6年だったのに比べ、令和2年8.7年と約2倍近くになりました。平均車齢は人間でいう平均年齢です。国内で登録されている車の年齢が高くなっているので、昔はエアコン不調になるまで乗っていなかった方でも、エアコンを点検・修理する機会が増えたのだと思います。車も高齢化社会なのですね。
車検の時にエアコン点検をすることも出来ますから、整備工場に相談することをお勧めします。もちろん当社ではカーエアコンの修理経験も豊富です。国産・輸入車を問わず修理していますのでお気軽にご来店ください。
本記事では、
- カーエアコンの仕組み
- カーエアコンの各部品名称と役割
- カーエアコンの使い方とメンテナンス
について解説していきます。
- 1. 【図解】カーエアコンの仕組み
- 1.1. コンプレッサーでエアコンガスを圧縮する
- 1.2. コンデンサーでエアコンガスを冷却する
- 1.3. レシーバーに液状で冷媒を一時蓄える
- 1.4. エキスパンションバルブにて噴霧
- 1.5. エバポレーターでブロアファンの空気を冷やす
- 1.5.1. エバポレーターはエアコンユニット内部にある
- 1.6. エバポレーター・プレッシャ・レギュレーター
- 2. カーエアコンの使い方
- 2.1. 夏のエアコンの使い方
- 2.2. 梅雨の時期の使い方
- 2.3. 冬のエアコンの使い方
- 2.4. 吹き出し口から嫌な臭い
- 3. カーエアコンのメンテナンス
- 3.1. エアコンフィルターを定期的に交換する
- 3.2. エバポレーター洗浄
- 3.3. エアコンガスリフレッシュ
- 4. まとめ
【図解】カーエアコンの仕組み
自動車のエアコンの仕組みを説明する図を作成してみました。まずは図をご覧ください。
※エアコン配管内を動く冷媒の色:青=低圧、赤=高圧を示します。
図で分かるように、エアコンシステム内を冷媒と呼ばれるエアコンガスが循環しています。
こうやって見てみるとエアコンシステムは意外とシンプルな構造だと思います。もう長い間大きな技術革新はなく、改善と改良で熟成された技術ですね。
それではエアコンシステム内のエアコンガス(冷媒)の流れを追ってみていきましょう。本解説ではコンプレッサーを起点にしていきます。
コンプレッサーでエアコンガスを圧縮する
車内のエアコンパネルの「A/C」スイッチを入れ、エアコンをONするとコンプレッサーが作動します。
でもエンジンルームで見るといつもベルトが回ってコンデンサーが動いているように見えます。いったいどういうことでしょうか?
エンジンを動力にベルトでコンプレッサーを回す場合、エンジンルームで目視するとコンプレッサーのプーリーが回転して動ているように見えます。でも実はエアコンのスイッチがOFFの時はプーリーは空転してコンプレッサーは停止しています。
エアコンのスイッチを入れることで、リレーを介してコイルに電気が流れ磁力でマグネットクラッチが繋がりコンプレッサーに動力が伝わり始めます。車の心臓がエンジンならエアコンの心臓はコンプレッサーです。
コンプレッサーの役割
気体と液体の性質を利用したエアコンシステムにおける圧縮工程を担っています。
エアコンガスを低温低圧のガス状冷媒から機械的に圧縮し、高温高圧のガス状冷媒(半液体)へと変化させる役割があります。高温になってしまうことは圧縮工程なので避けられませんから次の工程にコンデンサーがあるのです。
コンプレッサーにはエンジンの動力をベルトで伝えて動くものが主流でしたが、最近は、ハイブリッド車やEVが多くなり電動のコンプレッサーもあります。
コンプレッサーはエアコンシステムの中でも交換の頻度が多い部品です。これは、エアコンガスが漏れるとガスと一緒に充填されているエアコンオイルも抜けてしまうことが原因の一つです。他にも故障の原因はありますが、需要が多いコンプレッサーはメーカーの新品部品は高額なため、リビルト製品(中古品をオーバーホールし再生している部品)が多く流通しています。
エアコンのリレーとは?
こちらの写真がエアコンのリレーです。左側はリレー内部が見れるように分解したものです。リレーの内部は電磁石となるコイルがあり、エアコンのスイッチがONになると電気が流れ、接点が繋がりコンプレッサーが作動します。このリレーが原因でコンプレッサーの作動不良になることもあります。
コンデンサーでエアコンガスを冷却する
コンプレッサーで圧縮された冷媒が最初に送られるのはコンデンサーです。コンプレッサーからコンデンサーにつながれた配管は高温高圧のため、手で触ると熱いです。エアコンの配管だからどこでも冷たいというわけではないので注意が必要です。
コンデンサーの役割
コンプレッサーにて高温高圧となった冷媒を細い管がくねくねと配置されたコンデンサー内を通すことで熱を放出し、低温高圧の液状冷媒へと変化させます。
コンデンサーは、熱伝導率の優れたアルミ製のフィンがついています。空気に触れる面積を広くとり放熱効果を高めています。一般的にバンパーグリルを除くと見える部品です。車の前面に位置している理由は走行時に冷却効果を高めるためです。
レシーバーに液状で冷媒を一時蓄える
コンデンサーで冷やされた低温高圧の液状冷媒を一時蓄える場所です。「レシーバー」「レシーバータンク」「リキッドタンク」などの名称で呼ばれています。
レシーバーの役割
レシーバーはエアゾール缶のようなものです。ヘアスプレーなどスプレー缶に内容物が低温高圧で封入されています。車のレシーバーの場合エアコンガス自体をコンプレッサーで高圧にしています。レシーバーでは、エアコンガスを蓄えると同時に内部の余分な水分や不純物を取り除く役割もあります。
このレシーバーに蓄えられた高圧の液状冷媒をエキスパッションバルブに供給します。
エキスパンションバルブにて噴霧
レシーバーに蓄えられた冷媒は低温高圧の液状です。この高圧の冷媒を一気に膨張させ霧状に噴霧するのがエキスパンションバルブの役割です。
エキスパンションバルブの役割
高圧で液状の冷媒をそのままエバポレーター内に通しても冷房としては機能しません。
そこで登場するのがエキスパンションバルブです。冷媒を一気に膨張させ高圧から低圧の霧状にしてエバポレーターに送ります。
高圧から低圧に一気に膨張し熱エネルギーが奪われ、エキスパンションバルブを通過した冷媒は急激に気化し温度が下がる性質を利用しています。
エキスパンションバルブは感熱筒につながっていて、エバポレーター出口の温度を検知しています。エバポレーター出口の温度によってバルブの開度を自動で調節しています。小さな部品ですが、エアコンシステムにおいて重要な役割をもっています。
エバポレーターでブロアファンの空気を冷やす
エキスパンションバルブまではエンジンルームにレイアウトされていましたが、エバポレーターは室内のインパネ内部のエアコンユニットの中に内蔵されています。
そのためエバポレーターの交換や点検はインパネやダッシュボードなどの脱着が伴います。整備工場でも経験のある整備士でないとなかなか大変な作業になります。エバポレーターは実際に室内に送風される空気の通り道にあり、ここまでの工程はこのエバポレーターに冷えた冷媒を送るためとも言えます。
エバポレーターの役割
エバポレーターは、ブロアファンから送風された空気の熱を奪うことで冷やす役割があります。エバポレーター内の冷媒はエキスパンションバルブにより噴霧され膨張の過程で、周囲の熱を奪い気化していきます。効率的に熱を奪うためにラジエーターやコンデンサーと同じようにフィンがついた形状をしています。
もう一つの役割が除湿です。エバポレーターはエアコンユニットと呼ばれる箱の中に入っています。ブロアファンから送られる空気は水蒸気を含んでいます。水蒸気を含んだ空気から熱を奪うためエバポレーター表面では結露が発生します。これは中学校の理科で習った気温と飽和水蒸気量の関係ですね。
気温が高いほど飽和水蒸気量が大きく、空気中に多くの水蒸気を含んでいることが出来ます。冷媒に熱を奪われたエアコンユニット内の空気は水蒸気が飽和し、水滴となります。
夏にエアコンをつけた車を駐車していると、水が溜まっていたり、ポタポタと水滴が出ているのを見たことはありませんか?
あの水滴は、エバポレーターで発生した水滴を排出する水抜きダクトから出ているのです。
冬場でもエアコンが大切なのは、エバポレーターによる除湿効果があるためです。
冬はエンジンにより暖められた冷却水を室内のヒーターコアに通すことでブロアファンの送風を温めています。
エアコンのスイッチOFFでも室内を温めることは可能ですが、除湿されていない湿った空気が室内に入り込むため、ガラスが曇ってしまいます。ですから冬場もエアコン「A/C」スイッチはONにしておきたいですね。
エバポレーターはエアコンユニット内部にある
エバポレーターは室内にあります。点検や修理にはこの部分を取り外す必要があります。
インパネやダッシュボードを脱着し真ん中に見える白色のボックスがエアコンユニットです。(赤丸で囲まれたもの)
エアコンユニット内からエバポレーターを取り外した画像です。(赤丸で囲まれたもの)下の青丸で囲まれたのはヒーターコアになります。
エバポレーター・プレッシャ・レギュレーター
プレッシャ・レギュレーターの役割
エバポレーターとコンプレッサーをつなぐ配管に取り付けられています。エバポレーターからコンプレッサーに直通で冷媒が戻るとエバポレーターが冷えすぎてしまう可能性があります。
冷えすぎるとどうなるのか?
家庭用冷蔵庫で小型のタイプで、室内に冷媒の配管で直接冷やしているものがあります。
盛り上がった霜の付いた冷凍庫を見たことがありませんか。車のエバポレーターも同じで冷やしすぎると同じことが起こる可能性があります。
そのため、エキスパンションバルブの開度を調整したり冷媒の流量をレギュレーターで制御しています。
カーエアコンの使い方
自動車のエアコンの仕組みをご理解いただけたでしょうか?
ここからは、快適にドライブするためのエアコンの使い方を解説していきます。
吹き出し口の選択や室内循環と外気導入の切替スイッチなどなんとなく使っている方も多いのではないでしょか?
より快適な室内空間とするために使い方を覚えておくといいですね。
夏のエアコンの使い方
夏の炎天下に駐車されていた車の室内はとても高温になり熱気がこもっています。
こんな時は、まず車内のこもった熱を車外に出すことが大切です。そして熱気が抜けるまでは外気導入の方がよいですね。
より効率的に冷やすためには、エバポレーターに送られる空気の温度が低い方がいいわけです。外気より室内が高温になっている場合に有効です。
熱気が溜まった室内の空気を内気循環でエバポレーターに送風するとコンプレッサーはフル稼働です。そうなるとエンジンの燃費にも影響がでます。
ちょっとした工夫で早く冷やすことが出来ますね。ある程度温度が下がれば内気循環に戻します。
もちろん車内の温度が上がらないように、サンシェードなどで対策をしておくことも大切です。
梅雨の時期の使い方
梅雨の時期は湿度が高くジメジメしています。気温はそれほど高くなく、冷房をつけるほど暑くないですが問題となるのは窓ガラスの曇りです。
ガラスが曇る原因は、空気中の水蒸気が飽和してしまうためです。ですからこんな時は、フロントガラスに除湿された空気を当てることが効果的です。
エアコンのスイッチをいれ、吹き出し口はデフロスターにします。
季節により温度設定は難しいところですが、25℃くらいでいいように思います。
風量が強いと寒く感じる場合は風量を弱めて、ドアバイザーが付いている車なら数センチドアガラスを開けるとくもりがとれやすいです。
室内の湿度を下げることが大切ですね。
冬のエアコンの使い方
冬はヒーターを使用します。温めるだけだからと「A/C」のスイッチをオフにしていませんか?
エアコンによって除湿されていない空気で室内を温めると、外気との温度差で窓ガラスが曇ります。
朝起きてカーテンを開けると、窓一面に水滴がついているのと同じ原理です。冬の外気は冷たいですから室内の熱を奪い、その結果くもりが発生します。車の室内狭い空間ですから、乗用車で4人乗車ならあっという間に曇ってしまいます。
ですから、冬でもエアコンのスイッチはONにすることで曇り止めになります。梅雨時期と同じでフロントガラスに風が当たるデフロスターにすると曇り止めの効果は高くなります。
吹き出し口から嫌な臭い
吹き出し口の嫌なにおいの主な原因はカビです。
カビが発生する場所はエバポレーターとエアコンフィルターです。
エアコンフィルターは交換すればカビを除去できますが、エバポレーターはそういうわけにいきません。
エバポレーターにカビが発生する原因は、結露して水滴が付いたまま放置されるためです。
そのため、長距離運転時などは、停車させる少し前にエアコンのスイッチをオフにして送風をエバポレーターに当ててあげるとカビが発生しにくいです。
なかなか面倒なことですが、匂いが気になる方はお試しください。
次のメンテナンスの内容もご覧ください。
カーエアコンのメンテナンス
ここではエアコンの故障ではなく、日常のメンテナンスについてお伝えします。
エアコン関係の故障については、また別の機会にお伝えできればと思います。
車検の時に追加メニューで行える作業ですから、ぜひ定期的なメンテナンスをご検討ください。
エアコンフィルターを定期的に交換する
エアコンフィルターはエバポレーターに風を送る手前に取り付けられています。
昔の車でエアコンフィルターが装着されていない車もあります。そういう車のエバポレーターを見ると埃とごみがビッシリとついています。
汚れが付いたエバポレーターでは十分な性能を発揮しないのは想像できますよね。
フィルターが装着された車でもフィルターが目詰まりすると十分な風が送られません。エバポレーターの汚れにもつながるのでエアコンフィルターは定期的に交換することをお勧めしています。
エアコンフィルター自体もカビが繁殖しやすい環境ですから、定期的に交換することで嫌なにおいを発生させる原因を抑制する効果があります。
エバポレーター洗浄
エバポレーターの汚れは、カビの発生を促進します。嫌なにおいを感じるのはエバポレーターのカビが原因です。エバポレーターは除湿を担うため湿気にさらされています。出来る限りエバポレーターを綺麗に保つことが大切です。
エバポレーターを洗浄することで、その機能が回復し、カビを除去することが出来ます。
しかしエバポレーターを直接脱着して洗浄するには工賃が掛かりすぎます。
そのため、簡易的な方法ですが、エアコンユニット内のエバポレーターにノズルで洗浄剤を吹き付けるという方法があります。汚れた水は水抜き穴から排出します。
エアコンガスリフレッシュ
車のエアコンガス(冷媒)は長年使っていると水分や不純物が混ざってしまい冷却効果が十分に発揮されなくなります。ガスと一緒に入っているエアコンガスオイルも劣化しますから定期的なリフレッシュが効果的です。
車のエアコンガスを専用のガス回収機で真空引きで排出します。エアコンガス専用機内で水分や不純物を除去したのち、不足分の冷媒と抜け出た分のオイルを新品で充填します。
ちょっと効きが悪くなったと感じていたらぜひお試しください。吹き出し口温度が下がりますから効果を実感して頂けます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。カーエアコンについて疑問は解消されたでしょうか?
本記事が皆さまのカーライフのお役に立てていたら光栄です。
ウッドベルでは車検整備だけでなく、エアコン修理も沢山行っています。特に夏場はインパネ、ダッシュボードを脱着している風景が日常的です。
メーカーのリコール修理なども行っていますので、車のエアコンでお困りの際はぜひご相談ください。
エアコンフィルター交換やエアコンガスのリフレッシュはお待ちいただいている間で作業できます。
故障による修理でお預かりとなる場合は、車検と同様に代車をご用意いたします。
お電話、ご来店をお待ちしています。
車のエアコン修理をお任せください
三重県松阪市で創業51年の老舗カーディーラーです。創業当時から自動車の修理に力を入れ、経験と技術が蓄積されています。エアコン修理もウッドベルにご相談ください。
エアコン修理でお預かり中は、代車をご用意いたします。修理が高額な場合はローンにて分割払いも可能です。クレジットカード支払いも可能です。